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兄弟パロ第八段

よし、これで追いついた………はずっ!!
8.Visitatore a mezzanotte.
 ~彼が窓の鍵を開ける音がやけに耳に響いたらしい~

 ベッドの横に敷いた布団に座った兄さんが恨めしそうに見上げてくるのに、オレは思わず視線を泳がせた。
「俺と一緒に眠るのは嫌なのか?」
 寂しそうな子犬の瞳に思わず「うっ」と詰まる。そういう目をするのは反則だろう、兄さんっ。
「えっと、その、兄さんと寝るのが嫌なんじゃなくて、シングルベットに男二人は狭いからっ」
「そうか………」
 オレの言葉に嘘が無いのは解っているのだろうが、それでも残念そうにしゅんっと項垂れる姿は否でも応でも罪悪感を煽られる。捨て犬の視線とこれ以上真正面から向き合っていたらうっかり絆されてしまいそうで、さり気無さを装って視線を逸らせば、確りと施錠された部屋の窓の鍵が視界に入った。
「あ、鍵閉まってる」
 慌てて窓辺に移動し鍵を外していると、背後から兄さんの不審そうな声がかけられた。
「昨日も思ったが、鍵を開けたままでいるのは不用心だろう。この辺りでも泥棒くらいは出るだろう?」
 眉を潜めて不可解そうにオレの手元を見つめる兄さんに、苦笑しながらオレは小首を傾げた。
「リボーンがいるから大丈夫だよ。あいつ、要所要所にトラップ仕掛けてるから」
 肩を竦め、振り返った窓枠をそっと撫で、無意識に眼を細める。
「この窓はいつだって開けておくって決めてるんだ。ヒバリさんがいつ来ても良いように」
 冷たいステンレスの窓枠の真下には、畳まれた古い新聞紙が妙にきちんと置かれている。いつもいつもオレの部屋の窓を玄関代わりにしてくれる困ったひとに、「せめて土足で上がるのは止めてください」と訴えて以来常に置かれている古新聞紙がさり気に定期的に取り換えられているのは、取り換えている本人であるオレが一番よく知っている。
「こんな時間に?」
 声に出さず笑うオレの背を見つめながら、なおも不審そうな声で問う兄さん。確かに、本当なら不審で非常識で不快な訪問なのだろうけれど、でも、ヒバリさんだし。

 此処はあのひとの安心して眠れる場所の一つだから。
 あのひとから取り上げたくない―――

「うん。ヒバリさん、夜の見回りの途中で眠くなったとかでよくオレのところに眠りに来るんだ。自分の家に帰るよりも近いんだって」
 心の一番奥のそのまた奥にひっそり息づく理由には気付かない振りをして、オレはくるりと振り向くと窓枠に寄り掛かり、茶化してへらりと笑う。
「最初は吃驚したよ~~。朝起きたら隣りでヒバリさんが眠ってるんだもん。しかもヒトを抱き枕にしてっ。吃驚しすぎてヒバリさんが起きるまでカチンコチンに固まってたよ」

 気付いて欲しくない。まだ誰にも察して欲しくない。
 理由の理由なんてオレが一番知らない。オレが一番まだ分からない。
 だから、まだ誰も気づかないで。オレより先にその理由に名前を付けないで―――

「ふ~~ん、よく、ね」
「うん。だから、窓はいつでも開けといてね」
 兄さんの平坦な応えにあっさり頷きながら、オレは『判らない』感情に今日も気づかない振りをしてへにゃりと笑う。

 鈍い鈍いダメツナは、己の心さえ往生際悪く鈍らせたままでいたいのです―――

「ふ~~~ん………」
 何処か不機嫌そうな声をうっかり聞き逃したオレは、オレが窓の鍵を開ける音がやけに兄さんの耳に響いたなんて知る由もなかった。

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御月雪華

Author:御月雪華
自サイトにて、オリジナルと二次創作の小説を載せています。
蝸牛の歩みよりも鈍い更新速度ですが、興味のある方はどうぞお気軽にお越しください。

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