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メールを有難うございます。

頂いたメールのお返事です。



>jing様
この度は我が家の如き僻地までご足労いただき有難うございます。
拙宅の駄文でささやかでも楽しんで頂けたのなら光栄です。

さて、お問い合わせの件ですが、「分け隔てなき君故に」を拙宅にて確認したところ問題無く全文表示できました。
このSSは他よりも少し長めなため、容量が少々重いのかもしれません。
宜しければ此方に全文載せますのでご覧ください。


「分け隔てなき君故に」
 
 証言その一。
 
 あの子、奴良君でしょ!? 知ってるっ!
 あのね? この間―――
 
 
「んんっ、お~も~い~~」
 何かを引き摺る音と誰かを盛大に罵る声が廊下を這う先に、やけに大きなゴミ箱を引き摺る少女の姿が一人。ゴミ箱の大きさも大きさなら、そのいっぱいいっぱいな詰まりっぷりは徒事ではない。そんな規格外なゴミ箱を運ぶ少女は、先程から引きも切らさず同じ委員会の委員、特に男子の委員を罵っていた。
「ああ、もうっ! 美化活動だかなんだか知らないけど、女の子にこんな重い物持たせるなんて、うちの委員会の男共サッイテー!! ふきゃっ!!」
 ぎっしり萎れた花が詰まったゴミ箱を抱えながら危なっかしい足取りでえっちらおっちら廊下を歩いていた少女に当然前が見えるはずも無く、誰かがバケツの水を零したのだろう濡れた廊下に足を捕られ、体勢を整える間も無く派手な音を立てて転んでしまった。
「あうぅぅぅ、もっサイテー……」
 両手もつけない体勢で転んで膝は擦り剥くし、やっとの思いで此処まで運んできたゴミ箱は中身を撒き散らして転がってしまうし。あまりに無残な有様に俯いて涙ぐんでいた少女の視界に、まだ真新しい上履きが入って来た。
「あの、大丈夫? 怪我してない?」
 まだ声変わりもしていないボーイソプラノが心配そうに少女に声をかけた。泣き顔を見られたくなくて顔を上げるどころか返事もできずにいると、小柄な少年は少女の膝に滲む血に気がついたのかそっと少女を支えて立たせ、自分は転がって行ったゴミ箱を拾って来てにっこり微笑んだ。
「此処はボクが片付けとくから、保健室で診て貰って来て?」
 小柄な少年はにこりと微笑み、少女が唖然と見ているうちに言葉通りテキパキと散らばったゴミを片付け、いっぱいいっぱいにまで詰まった重いゴミ箱を軽々と抱えて立ち上がった。
「ね? ゴミの中で転んだ傷だから、ちゃんと消毒して貰って?」
 少女をもう一度促し、小柄な少年はやはり重さを微塵も感じさせない歩みで焼却炉へとゴミ箱を運んで行った。
「男の子ってやっぱり力があるんだなぁ……」
 自分よりもずっと背が低いのに、あんなに運ぶのに苦労したゴミ箱を軽々と運んで行ってしまった後姿に憧憬さえ覚える。
「うん。先輩と気づかずタメ口聞いたことは許してあげよう♪」
 誰彼構わず自慢したいような、誰にも内緒に隠して置きたいような、そんな酷くはしゃいだ気分で少女は保健室に向かった。
 
 
 
 証言そのニ。
 
 あ、アイツ奴良だっ!
 アイツこの間さぁ―――
 
 
「だぁぁぁーーー、っちぃぃぃ」
「これ今日中に終わらせろって、センパイ達ムチャ言うぜ」
「ホント、干からびるって、ぜってー」
 野球帽を被った真新しいユニホームの少年が三人、グラウンドの隅でぶちぶち愚痴りながら五月晴れの炎天下の下で雑草と格闘していた。何故こんな事になったかと言えば、上級生が打った球がグラウンドの隅の雑草に紛れて見つからなくなってしまったのだ。で、丁度その辺りの玉拾いをしていた彼等が球の捜索と、ついでに草毟りを仰せつかってしまったという訳である。
「あー、もう。ホント、目ぇ回りそう……」
「大丈夫かぁ、って、アブねっ!!」
 少し青白い顔をしていた少年が、急にぐらりと上体を揺らしたかと思うとバタリと背後に倒れこんでしまった。
「うわっ! ちょっ、医者っ! てか、保健室っ!!」
「オレ、呼んで来るっ!!」
 少年の一人が慌てて校舎に走っていくのを横目に、もう一人の少年が倒れた少年をせめて日陰に連れて行こうと上体に手を掛けた時、グラウンドのネットの向こうからボーイソプラノの声が心配そうにかけられた。
「うわっ! 大丈夫!? 日射病!?」
 小柄な少年は急いでネットを回って来ると、倒れた少年の足を抱えてもう一人の少年と一緒に日陰に運びこんだ。そして、「ハンカチ濡らして来るっ」と近くの水飲み場に向かって走って行った。あまりにテキパキした動きに残った少年が唖然としてる間に、小柄な少年は濡れたハンカチを倒れた少年の額に置き、ぐるりと周囲を見回した。
「草毟り? 大変そうだね。ボクも手伝うよ」
 小柄な少年は言うが早いか、手近な草に手をかけ次々に草を抜いていく。そのあまりの手際の良さに呆気に取られつつ、本来この役目を振られた少年もまた確り帽子を被り直し、小柄な少年と背中合わせに草毟りを再開した。
 そうこうしている内に校舎に駆けて行った少年が保険医を連れて戻り、倒れた少年を二人の少年が保険医と一緒に保健室に連れて行く間も、小柄な少年はせっせせっせと草毟りを続けていた。
 
「何とか今日中に終わったなぁー」
「サンキュな!! もう、マジ助かったぁーー!! 今度、何か奢るっ!!」
 小柄な少年のお陰で何とか草毟りも終わり、球も見つかって二人の少年は笑顔で小柄な少年に礼を言った。そんな少年達に、小柄な少年は胸の前でぶんぶん両手を振った。
「ええ!? いいよ、お礼なんてっ」
「いいって、いいって。礼くらいさせろよ」
「そうそう。明日ジュース奢るなっ」
 恐縮する少年の背中をどやしながら二人の少年は「こいつ良い奴だなぁ」と自然に笑顔になった。何の関係も無いのに我が事のように心配し、この暑い中草毟りまで手伝ってくれた。本当に今時珍しい良い奴である。
「あっ、ゴミ捨てくらいはオレらすっから、もう暗いし気ぃつけて帰れよ」
「じゃーなー、ホントありがとなぁーーー」
 ゴミ箱に手をかけた小柄な少年を慌てて制し、二人の少年は小柄な少年の荷物を汚れを払って渡すとニッカリと笑う。口々に礼を言って手を振る野球少年達に、小柄な少年もまたにっこり笑って手を振り返して帰って行った。
 
 
 
 証言その三。
 
 奴良君? 今時珍しいくらい良い子じゃよ。
 この間なんか―――
 
 
「すまんなぁ。放課後にわざわざ準備室の片付けなんぞ手伝わせてしまって」
「いいですよ。ボク、こういうの好きですから」
 本心からにっこり笑ってそう答える小柄な少年に、老教師も釣られて笑顔を返す。本当に、今時見ない良い子である。丁度孫と同じくらいの生徒を感慨深い眼差しで見つめる老教師の視線の先で、小柄な少年は早速棚に横積みに積み重なった書籍の山をそっと机の上にどけ、舞い上がった埃にけほけほ咳き込んだ。
「うわっ。凄い埃」
「滅多に掃除せんからな。片付け出すと限がない。かといって放っとくにも限度がある。困ったもんじゃて」
 何処かおどけた老教師の言葉に、小柄な少年はくすくすと笑いながら濡れ雑巾片手にテキパキテキパキ片付けていく。棚を拭き、書籍の埃を払い、種類別に収納していく手際の良さに感心しながら老教師もまた床に積むだけ積み上げた書籍の整理に取り掛かった。
 
「ふむ。思ったより早う終わったな。奴良君が手伝ってくれたお陰だ。ありがとう」
 数日がかりかと思われた掃除は驚くほど早く終わり、夕暮れに染まる準備室を見回しながら老教師は感嘆の溜息をついた。手際も整理整頓も見事なものである。訂正の必要も無く完璧な書籍の並びに目を細め、老教師はにっこりと礼を言った。
「いえ。たいした事はしてませんから」
 小柄な少年は恐縮したように首を振ると、汚れた雑巾とゴミ箱を抱え上げにこりと微笑んだ。
「じゃ、ボク、掃除道具とか片付けてから帰りますね」
「ああ、ありがとう。本当に助かったよ」
 小柄な少年はぺこりと一礼して準備室を出て行った。
 
 
 
 検証<証言その一>。
 
「あ、奴良君っ」
 廊下の先から声をかけられたリクオが立ち止まり振り向くと、二学年上のカラーを身に付けた少女がひらひら手を振りながら駆け寄って来た。
「この間はアリガト。助かっちゃった」
 にこっと笑う見覚えのある顔に、丁度今居る廊下で出会った少女を思い出したリクオはにこりと微笑んだ。
「あっ、先輩だったんですね。失礼しました。えっと、怪我は大丈夫でしたか?」
「うん。もう跡もないよ。アリガトね。ね? 奴良君は甘いもの食べる人?」
 礼儀正しく非礼を詫び、怪我の具合を心配するリクオに、少女はますますにこにこと微笑み、ちょんっと小鳥が小首を傾げるようにリクオに尋ねてきた。
「あ、はい」
「そっ♪ じゃぁ、コレあげるっ。調理実習で作ったの。この間のお礼ね?」
 はい、と手のひらに乗せられたカップケーキと少女を暫し見比べ、リクオははっとしたように慌てて首を振った。
「え!? でも、そんなたいしたことっ!!」
「いいから、いいから♪ 私のき・も・ち。じゃぁね、奴良君」
「えっと、ありがとうございますっ」
 バイバイと手を振る少女に釣られて振り返すリクオの手の中で、少し歪なカップケーキがふんわり香った。
 
 
 
 検証<証言そのニ>。
 
「お? 奴良、発見っ!」
「おおーー、見つけたかっ!」
 二人の騒がしい少年の声に振り替える間も無く、左右からガシっと肩に手を回されたリクオは少しつんのめりながらも両脇を見上げた。小柄なリクオよりも背の高い少年達はニカッと笑うと、リクオの手に冷たく汗をかいたポカリスエットの缶を握らせた。
「よっ、昨日はアリガトな。ほい、お礼のポカリ」
「ホントにお礼なんていいのに」
「いいから、いいから! 礼は素直に受け取るもんだぞ」
 恐縮するリクオに、少年達は昨日のように背中をどやしつけて日焼けした顔でニッと笑った。
「ありがとう」
「そりゃコッチの台詞だっての」
「ホント、サンキュな! 奴良」
 笑って礼を言うリクオに笑い返し、少年達は手を振って廊下を走って行った。
 
 
 
 検証<証言その三>。
 
「おお、奴良君。丁度いいところに来た。奴良君は枇杷は好きかね?」
 放課後、準備室に教材を返しに来たリクオに老教師が声をかけてきた。老教師の手元を見ると、艶やかな橙色の果実が甘い香りを放っている。
「はい、好きです。甘くて美味しいですよね」
 にっこり笑うリクオに、好々爺の笑みを浮かべながら老教師が嬉しそうに頷いた。
「そうか、そうか。家内の実家から送られて来てな。たくさん有り過ぎて痛ませてしまうから、奴良君、良かったら貰ってくれんかね」
「いいんですか!? ありがとうございますっ!!」
「いやいや、この間は本当に助かったからな。ほんのお礼代わりじゃよ」
 小振りのスーパーの袋いっぱいに入れられた枇杷に歓声を上げるリクオに、老教師もまたにこにこ微笑んだ。
 
 
 
 結論。
 
「たった一日の聞き込みで、奴良を褒める人間が学校全体の7割を超えるとは……」
「奴良って凄いヤツだったんだね……」
 もう少しリクオを有り難がろうと思ったクラスメートだった。




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